「傾聴コミュニケーション」を大切にする理由:信頼関係を築き、自立する力を引き出します
当塾の特徴の一つに「塾生の話を丁寧に傾聴する」という関わり方があります。
今日は「傾聴」について記事を書きたいと思います。
「傾聴コミュニケーション」を大切にする塾
①信頼関係に基づいて目標達成をサポート
「傾聴」という言葉をご存知ですか。
傾聴とは、主にカウンセリングの学びや心理学で用いられる“話の聞き方”のことです。
塾生の成績向上や大学合格と話の聞き方には、関係があるのでしょうか。
私は、大いにあると思っています。
まず第一に、
・「英語や数学の知識を教えて塾生の成績を伸ばす」
・「塾生を合格に導く」
ということの土台として、信頼関係に基づいたコミュニケーションが大切だと考えています。
信頼できない人の話やアドバイスを、聞く気になるでしょうか。
若い人たちが「自分の人生を良くしていくために、この人の話を聞いてみよう」と思えるには、話をしている人が、信頼するに足る存在であることが必要です。
では、どうしたら信頼関係をつくることができるのか。
塾においては、受験や各教科に関する専門知識が十分であることや、教え方が上手であることは、当然必要なことです。
それに加えて「話をよく聴くこと」が大切だと、強く感じています。
私はもともと若い人の話を聞くことが大好きでしたが、傾聴のスキルを身に付けてからは、塾生からも「自分のことをよくわかってくれる先生」「何でも相談できるという安心感がある」などと言っていただくようになりました。
傾聴との出会い
ここで少し、当塾で傾聴をベースとしたコミュニケーションを大切にしている背景として、私の傾聴との出会いについて書きたいと思います。
私(学習塾Dear Hope塾長)が最初に傾聴と出会ったのは、大学在学時です。
私は東大教育学部の「教育心理学コース」で学びました。そこは臨床心理士を目指す人も在籍するコースで、カウンセリングの基礎を様々な角度から学びました。
その中で、話の聞き方として「傾聴することが大事」ということも、知識として学びました。
傾聴を深く学んだのは、社会人になってからです。
産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの資格を取得する際に、約1年かけて毎週「実践で使うための傾聴の訓練」をみっちりと受けました。
社会に出て、私自身も仕事でさまざまな経験をし、人生の課題を持ったうえで長期的に学んだ傾聴は、私のコミュニケーションのあり方、人とのかかわり方を大きく変えてくれました。
ほかにも様々な資格も取得しましたが、この「傾聴」の学びは、私にとっては本当に学んで良かったものの一つです。
②相手の中にある力を信じて関わる
さて、「塾生の成績向上や大学合格と、傾聴をベースとしたコミュニケーションとは、関係があるのか。」という話に戻ります。
さきほどは、「成績を伸ばしていく前提として、信頼関係が大切」という話をしました。
ここでは、2つ目の視点として「相手の中にある力を信じて関わる」という話をしたいと思います。
まず、傾聴とは「相手の気持ちに寄り添って、相手の方の言ってること、言おうとしていることに耳を傾ける。」という話の聴き方です。
その根底にある考え方は
・問題を解決するのは相手自身。人間は、自分の問題を解決する力を持っている。
・答えは相手の中にある。
・だからアドバイスはせず、本人が自分で答えに近づくことをサポートする。
というものです。
これは、人への信頼と尊重の気持ちをベースにした聴き方なのです。
相手自身に問題解決をする力がある、ということを信頼し、その力を相自自身が見出すことを手助けするのです。
当塾では、この関わり方は、教育において一人ひとりの成長を促す上で大切なものだと考えています。
「アドバイスをしない」について
上述した「アドバイスをしない」という部分は、驚かれる人も多いのではないでしょうか。
何を隠そう、私自身が「産業カウンセラー」の学びに興味を持ったのは、「もっと上手にアドバイス出来る自分になりたかったから」なのです。
大学1年生の時から教える仕事をしており、進路相談や保護者様からの相談に乗る機会も多いので、以前の私は「プロとして信頼してもらえるよう、ちゃんと良いアドバイスをしなければ!」と、肩に力が入った状態でご相談に応じていました。
「もっとスマートに、スパッと相手の悩みを解決できるアドバイスができるようになりたい」と考えていた私は、自分自身がキャリア上の問題にぶちあたったこともあり、産業カウンセラーを目指すことにしたのです。
ですので、講習の初日に「カウンセリングではアドバイスはしない」と教わった時には、とてもショックで、アドバイス法を学べないことを残念に思いました。
「相談されたのにアドバイスをしなかったら、無責任なのでは?」と感じました。
しかし約1年かけて、毎週のように傾聴の理論と実践を深める中で、「アドバイスをしない」の本当の意味を知るようになり、これがどれだけ深い意味を持つことかを痛感しました。
結局、人はどれだけ“素晴らしい”アドバイスをもらっても、自分が本当に納得し、自分の内側から湧きおこったものでない限り、人生の問題解決にはつながらないのです。
根本的な問題解決を手助けしたいからこそ、軽率にアドバイスはしない。
そうではなくて「相手が自分で、答えに近づけるように、話を聞く」のです。
こうした傾聴ができるようになるにはスキルと経験が必要ですが、本当の意味で、相手に寄り添った問題解決の手助けをすることができます。
当塾で大切にしていること
日々の受験指導や進路相談でアドバイスをしないのかと言えば、そんなことはありません。
当塾は「勉強法を教える」ということを特徴としています。
効果的な勉強法や、受験の情報、各教科の内容は、教わるほうがはやいですよね。知らないのに、「答えが出てくる」ということはありません。情報不足の中で出した答えは、それなりになってしまいます。
ですので、情報提供と客観的なアドバイスは、積極的に行います。
でも同時に「最後に決めるのはあなただよ」というメッセージも伝えます。
なぜなら、「自分の人生をどうしていきたいかを決めるのは自分だ」という大切なことを、伝えたいからです。
そして、本人の人生にとって最善の選択ができるように、話を聞いています。
傾聴の考え方は、教育で生きる
私は、傾聴のスキルと考え方は、教育現場で大いに生きるものだと心から感じています。
傾聴は「相手を信頼した上で寄り添う」というスタンスです。
教育においては、ともすれば「相手が未熟だから教える。」「自分では問題解決できないだろうから、解決法を教える。」といったスタンスがとられがちです。
もちろん、前述したとおり、善悪は、しっかりと教える必要はあります。しっかりした情報提供は必要です。
しかし、本当の意味で本人を成長させるのは「一人ひとりの中に力がある」ということを信じて接するスタンスではないでしょうか。
信頼されているからこそ、安心してがんばれる。
信頼されているからこそ、答えが与えられるのを待つのではなく、自分の頭で考えてみる、ということにつながると思うのです。
傾聴は、自立を促すことにもつながるのです。
学校の先生や高校生にも「傾聴セミナー」を実施
「傾聴を深く学べてよかった!」と思った私は、傾聴を学んでいただける機会を作りたいと思いました。
そこで、私立の中高一貫校の学校の先生や、塾の先生、カウンセラー、企業の人事部の方々、それから反抗期のお子さんをお持ちの保護者さまを対象に、「傾聴セミナー」を10回以上開催してきました。
「傾聴を、すべての学校の先生に、必須の学びにして欲しい」「教育者が傾聴を知っていたら、幸せな子どもたちが増えると思う」などのご感想をいただきました。
さらに、希望する塾生対象にも「聞き方講座」を開催し、心理学の入門や「カウンセラーの仕事とは」といった内容にも触れてもらいました。講座は、とても好評でした。
高校生からは「これまでいかに人の話を聞いていなかったかわかった」「心理学の理論が非常に興味深く、もっと学びたいと思った」などの感想をいただきました。
最後まで、話をきいてもらえる場を
一見、「聞く」と「教える」は対照的な行為のように思えるかもしれません。
しかし、「相手が良い方向に進む手助けをする」ということは共通しています。
そして「教える」というのは、「教えを受け取る」相手がいてこそ成立する行為です。
教えを受け取るってもらうには、信頼関係の構築は欠かせません。
さらに、教育の目指すところが、自立した人間に成長する手助けであるならば、信頼を持って自立を促しながらも、一人ひとりに寄り添う傾聴のスタンスは最適だと思うのです。
そして、最後になりましたが、一番私のおもいは「話を最後までちゃんと聞いてあげたい」ということになると思います。
最後までしっかりと、途中で割り込まずに。
それが、私が塾生にしてあげたいことです。大切に思っている気持ちを、そうした形で表したいと思っています。
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この記事を書いた人:
学習塾Dear Hope塾長 伊藤智子