伊藤　智子

東京大学メタバース工学部の設立。中高生向けの講座が、この秋多数開講。

現在、日本の大学の工学部は、男性が８割以上（難関国立では９割）となっています。

工学部の中身は、機械や宇宙・航空、土木、建築、電子・電気などですので、一見すると、「主に男性が活躍していそうな分野」だというイメージが強いのではないでしょうか。

しかし、思い返せば、私たちが生活の中で使う様々な道具も、生活空間である家も街も、道もビルも乗り物も、すべて工学に基づいて作られているのですよね。

手に触れるもの、体をとりまくもの、すべてに工学が関わっています。

人と社会にこれだけ密接にかかわる分野でありながら、女性があまりに少ないというのは、心許ないことです。

実際、女性の工学系人材は、企業から、強く求められています。

より多くの女性が工学を学び、工学の分野で活躍するためのヒントは、今年、当塾の卒業生が、東大の工学部に学校推薦型選抜で合格されたプロセスにあると感じます。

彼女は、建築家を志していました。

家は、人が人生の多くの時間を過ごす場所だから、家は、人の幸福の土台にもなり得る。

人の幸福の土台となる建築をやりたくて、建築学科への進学を希望したのです。

その想いを東大の学校推薦型選抜で結実させ、見事、合格されました。

（合格インタビュー記事はこちらにあります）

＊＊＊

一般に、女子高校生が進路を選ぶとき、学部の中身を詳しく知らないのに文学部や社会学部、商学部を選ぶことはあっても、工学部を選ぶことはほとんどないですよね。

工学部を選ぶには、まずは自分や家族、社会にとって身近なモノに興味関心を持ち、それをより良いものにしたいという思いを持つことが出発点となると思います。

理想的には、キャリア教育を通して、工学部に限らずすべての学問が、人や社会とどう関係しているかを知ったり、考えたりする機会があれば、それをきっかけに、工学に興味を持つ女性も増えると思います。

上記の「キャリア教育」に関して、潮流を変える転機となり得るニュースがあります。

この秋、東京大学に、メタバース工学部が設立されました。9月23日、仮想空間で行われた設立記念式典は、ニュースにもなっていたので、ご存じの方も多いかもしれません。

メタバース工学部は、すべての人々が最新の情報や工学の実践的スキルを獲得して夢を実現できる社会の実現を目指し、デジタル技術を駆使した工学分野における教育の場で、東京大学大学院工学系研究科・工学部が中心となり、産官学民一体となってDX人材を育成するために設立されました。

つまり、いわゆる東大の１つの学部ではなく、東大が中心になって実施する、中高生や学生、社会人に対する工学教育の場です。

中高生向けのプログラムを一部紹介すると、「メタバースを作ろう」「未来の原発をデザインしよう」「スマホで脈波を測ろう」など。

プログラムの一部は、すでに開始していますが、ほとんどはこれからスタートします。中高生向けのものは、基本的に無料で受講できます。

設立の目的の中に、

「年齢、ジェンダー、立場、住んでいる場所などに関わらず、すべての人が工学や情報を学べる教育システムを構築します。特に、工学や情報の魅力を女子中高生に伝え、ＤＸ人材育成のダイバーシティ推進を加速します。」

という文言もあります。

もし、この記事を読んでいらっしゃる皆さんにとって、少しでも興味があるプログラムがあれば、勇気を出して、挑戦してみてはいかがでしょうか。

オンラインで無料だと、途中でやめてしまいやすい環境かもしれませんが、自分を高めてくれそうな機会だと思ったら、中途半端に参加するのではなく、その機会に感謝して、精一杯の学びを得てほしいと思います。

東京大学メタバース工学部に関する詳細、講座の詳細はこちらをご覧ください。

＊＊＊

11月10日（木）
日経xwoman DUALの大学受験セミナーで講師をさせていただきます

伊藤智子（いとうともこ）

◇東京大学教育学部（教育心理学コース）卒。
◇教育家の夫婦が開いた、丁寧な少人数制の学習塾　Dear Hope〔ディア・ホープ〕塾長。
◇YouTube＃心が軽くなる勉強法