伊藤 智子


2021 共通テストレビュー(英語) 英文は読みやすいが、解答には複合的な視点が必要

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こんにちは。
東大・京大合格クオリティ
品川区武蔵小山/全国オンライン
学習塾Dear Hope塾長の伊藤智子です。

共通テストの1回目(※)が終わりました。受験された皆様、お疲れさまでした。(※今年はコロナの影響で、共通テストの日程が1月中に2回あって選択可能で、さらに2月に追試があります。)

2回目の日程を選択した人、追試日程の人、そして来年以降の受験生は、「共通テストは結局、これまでと何が違うのか」が気になるところだと思います。

すでに1回目の問題と解答が公開されていますので、解いた人もいると思いますが、20年以上、大学受験を指導してきた私の視点から、今回のテストの所感を書きたいと思います。

※現代文・数学のレビューもありますので是非どうぞ。
現代文:文章の難易度を下げつつ「設問意図の把握力」を問う問題
数学:試行調査ほど思考力は要求されず手探りな出題

センター試験との違い すべての科目の中で、形式が最も変わったのは英語

今回、センター試験から共通テストに変わり、形式上の変更が最も大きかったのは科目は、まぎれもなく英語です。

ご承知の方も多いと思いますが、目立つ変更としては、
・リーディング200点リスニング50点 ⇒ リーディング100点リスニング100点
 (ただし、リスニングの扱いは各大学による)
・センターの「発音アクセント・語彙文法問題」は全く出題されず、すべて読解問題に。

といったものがありました。

語彙文法問題が読解に変わった結果、問題文のワード数が昨年の2800→3900と、大幅に増えました。(駿台調べ)

試行調査との違い

共通テストがどんな形式のテストになるのか。それについての情報は、2度の試行調査しかありませんでした。

試行調査とは;文科省が共通テストのサンプル問題のようなものを作り、平成29年、30年と予備試験を実施したものです

試行調査では、答えの数が特定されず、「当てはまるものをすべて答えよ」といったタイプの問題があったので、完答することが難しく、受験生泣かせでした。

しかし、本番はそうした出題はなく、解きやすくなっていました。

細かい部分では、試行調査で出題されていた「料理のレシピ問題(物事の手順や所要時間を問う問題)」「登場人物の心情の変化を問う問題(happy⇒surprised⇒disappointedなど)」も、本番での出題はありませんでした。

しかし、そもそも、「試行調査通りに出題する」といった事前予告はありませんでした。試行調査はあくまで、共通テストの方向性を示しつつ、共通テストをより良いものにするための予備試験だったはずなので、多少の違いがあることは想定内でした。

それを踏まえると、個人的には、試行調査に似つつも、より解きやすい問題になっていた、と感じました。

模試や予想問題との違い

やはり本番の問題は、スッキリと解きやすかったです。

各予備校や教材出版社が、さまざまに、試行調査の類似問題を作って、模試や問題集にしていました。類似問題作成の労力に対しては敬意を表します。ただ、あくまで類似問題なので、難易度がまちまちだったり、ときには、形式ばかり似せるあまり、解答の根拠が曖昧だったり、と、受験生も苦労する部分も少なからずありました。

塾生に、共通テスト模試や対策本について、「なぜこれが答えなのか、解説を読んでもわかりません」と質問されることも多かったのですが、私が解いても根拠が不明確なため、「あまり良い問題じゃないから、気にしないでいいよ」と言うことさえありました。

しかし本番は、答えの根拠となる部分がきちんと文中や資料の中に示されていたので、個人的には、曖昧なモヤモヤした問題は1問もなく、大変スッキリしました。

今回の出題から感じた意図など

◇英文自体の難易度は高くなく、従来のセンターレベル(または易しめ)だと思います。

◇しかし、これまで以上に英文を早く正確に読めることに加えて、文章と表を組み合わせて必要な情報を見つける力が求められました。

先述の通りワード数が増え、さらに表やらグラフやらプレゼン用の資料やら、英文以外に見なければいけない資料が多いわけです。

設問に答えるために、あちらこちらに気を回さなくてはいけないので、時間がかかってしまい、制限時間に終えるのが厳しかった受験生もいただろうと思います。

大学入試改革の一環として、センター試験から共通テストに変わった経緯としては、「新しい時代に求められる能力を身につけさせるため」だったわけですが、情報を組み合わせて複合的に判断する力を問う意図は強く感じられました。

また、出題された英文のテーマも、日常場面でよくあるメール文、スケジュール調整、プレゼン資料の準備などで、「実践的な場面で英語を利用できること」に主眼を置いた出題となっていたと思います。

(2000年以前のセンター試験の第6問は、ハートウォーミングな物語文が多く、その当時は「書いてある英語がきちんと読めること」に主眼が置かれていたと感じます。時代の変化を映し出していますね。)

最後に

入試の形式変化は、これまでもたびたびありました。しかしいつも思うことは同じです。形式が変わっても、ちゃんと実力をつけていた人には、解けるものは解けるから、心配ない、ということです。

今回は、これまでになく大きな変化が予想されていて、情報も二転三転していましたが、私たち講師は、「形式変化に振り回されないだけの、真の実力をつける」ということを第一に授業を行ってきました。内容も、共通テスト対策の授業であっても、良質なセンターや各大学の過去問を幅広く解いたりしました。

その結果、「本番で自己最高得点を獲れた塾生」がとても多く、方針が間違っていなかったことが感じられました。

今年の受験は、入試改革、コロナ、異常気象と、例年になく大変な要素が多いですね。その中でも、受験生の皆さまが、少しでも穏やかな気持ちで、積み重ねてきた努力の成果を発揮できますように、陰ながら応援しています!!

※現代文・数学のレビューもありますので是非どうぞ。
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