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リカレント教育(2) スウェーデンで見た光景 

Posted by 伊藤 智子 on
Dear Hopeが大切にしていること
リカレント教育(2) スウェーデンで見た光景 

こんにちは!学習塾Dear Hope代表の伊藤智子です。

秋はAO入試対策、英検対策、学校の定期試験対策が重なり、気づけば更新が久しぶりになってしまいました。

今日は前回の続き(リカレント教育(1)社会人の大学受験生も通塾中)をお話しします。

中学受験生のときにスウェーデンへ

私は小学校5年~6年生を北欧のスウェーデンで過ごしました。

住んだのは、スウェーデン最南端の町 Lund(ルンド)。

父が仕事の関係でルンド大学の客員研究員として招かれ、家族でスウェーデンに渡ったのです。

(ルンド大学。写真はスウェーデンの教育機関サイトより。ルンド大学は、北欧でも最も古く規模の大きい大学の一つで、特に海外からの留学生、研究者の受け入れ数は最大とのこと。)

私は小学校4年生の時に、とある中学受験対策の塾に通い始めました。当時私は、自分は塾の友達と同じように中学受験をするものだと思っていたので、突然のスウェーデン行きには、とても戸惑いました。

スウェーデン行きのせいで、中学受験を諦めたくはなかった。でも、状況はとても不利でした。

なにしろ、インターネットが普及していない時代。Lundは、大学はあるものの、街としては田舎だったので、日本人学校もインターナショナルスクールもなく、現地のスウェーデン語の学校に通わなくてはならなかったのです。スウェーデン語での学校生活や宿題に時間を取られながら、日本から買っていった教材だけを頼りに、独学で中学受験を目指すことになりました。

これは想像以上に大変なことでした。この経験が私を鍛えてくれたことは確かで、日本で普通に受験勉強をできた東大受験のほうが、よほど精神的にも環境的にも、やりやすかったです。

でもこの話は、また改めて。今日はスウェーデンで見た「リカレント」を書きたいと思います。

何歳からでも、大学に行ける環境

ルンドに到着して、驚いたことがあります。

事前に”大学町”と聞いていたので、「大学の近くは若者に溢れた町なのだろう」と想像していました。

ところが、そんなことは全くありませんでした。大学構内には、中年くらいの方がとても多かったのです。

父に、大学の学食に連れて行ってもらったこともあるのですが、そこでも同じでした。

小学生ながら、不思議な感覚を持ったのを覚えています。

理由は簡単でした。

一つは、上記にあるように、海外からの研究者や留学生の数が非常に多く、国籍・年齢が多様な人々が大学に所属していたこと。

もう一つは、スウェーデンでは社会人になった後でも、必要に応じて大学で学び直すのが、珍しいことではなかったのです。

今ではスウェーデンは「有給教育訓練制度」が充実している国としても知られ、お給料をもらいながら、一定期間職場を離れて教育訓練を受けることができる環境が整っています。

何歳になっても「学ぼう」「学ぶ必要がある」と思ったときに、教育を受けられるというのは、とても意味のあることだと思います。

日本でも、特にここ数年「リカレント」が推奨されていますが、実際のところ、社会人になった後でまとまった学びの時間を確保するためには、クリアすべき問題も多くあります。

有給教育訓練制度を導入している会社は限られていますし、制度として存在はしても、自分の希望だけでは利用しにくいのも事実ではないかと思います。

もちろん、大学に行くことだけが「学び」ではありませんし、「制度で保護された環境の中だから学べる、保護されていないから学べない」、というのも違うと思います。

日本でも、働きながら資格の勉強をしたり、夜間の学校に通っていらっしゃる方もいますよね。

私自身も、主人も、社会人になって普通に働きながら国家資格を取得しました。その大変さも味わいましたが、では保護されていたらもっとラクにチャレンジできたのか、というと、よくわかりません。時間的にも金銭的にも制限のある生活だったからこそ、集中して勉強できた気もします。

私が一番学んだのは、「小中高、そして大学生の間だけが勉強期間ではない。いつからでも、学ぶことで、自分を新しくできる」ということでした。

Gap Year

ところで、Gap Year という言葉をご存知ですか。

高校卒業から大学入学までの期間のことを指します。海外の大学では、あえてこの期間を長くとることを推奨したり、可能にしているところもあります。その期間に、留学・インターンシップ・ボランティア・世界旅行などをして、見聞を広め、自分の将来を考え、自分が大学で学びたいことについて考えを深めるのです。

日本でも、2011年、東京大学が世界のスタンダードに合わせて秋入学に移行し、秋までの半年間をGap Yearとすると発表した際に話題になりました。(※秋入学移行は実施されていません。)

スウェーデンでは、このGap Yearを取得することも普通のことでした。

私たち家族がスウェーデンで借りた家の大家さんには、私と同年代のお子さんが3人いらっしゃったのですが、大学に行く前にGap Yearを利用して世界旅行をしたり、アメリカへの短期留学をしていました。

日本では、大学に進学する場合は、高校卒業してすぐが一般的です。

就職活動の時に、周囲より歳を取っていると不利になり得るので、特に女性の場合、そうした理由で浪人をためらう人も少なくありません。

でも私は、学ぶ時期に関して、もっと寛容であっても良いのではないかなと考えています。

私がスウェーデンに住むことで触れた「学びの時期に寛容な社会」は、いまの私の考え方の土台になっていると思います。

何歳(いつ)からでも、学ぶことで道は開ける

仕事柄、多くの受験に関するご相談を受けます。私も、お一人お一人にとって最善の結果となるように、心を込めてお話しします。

また普段、大学受験生を直接指導しているので、みんなに希望の大学に合格してほしいと心から思います。

しかし一方で、目の前の受験ですべてが決まるわけではない、という視点も大事にしてほしいと思っています。

目の前の受験でうまくいかなかったことで、逆に人生を開いてきた塾生もいます。

例えば、大学受験で本命ではうまくいかず、第2志望だったところで4年間学ぶ中で、本当にやりたいことが見つかり、その学びができるのは東大の大学院しかないと分かって、院試にチャレンジして合格し、東大の大学院を出た、など。

受験の結果は、人生に少なからず影響があるものですが、どのような影響にするかは、その人次第です。

若いうちの受験だけが学びではありません。

何歳(いつ)からでも、学ぶことで道は開けていくので、希望を持って努力していきましょう!

この記事を書いた人:

東大卒 英語講師・キャリアコンサルタント 

学習塾Dear Hope代表 伊藤智子