伊藤 大幸


数学の勉強法(2)数学偏差値80への軌跡

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数学の勉強法(2)数学偏差値80への軌跡

こんにちは。学習塾Dear Hope 数学担当の伊藤大幸です。

前回の記事(数学の勉強法(1)偏差値50から80への軌跡)では、数学の勉強においては基礎が大切であることと、勉強の成果が成績に現れるまでにはある程度の時間がかかる、というお話をしました。

今回は、もう少し踏み込んで、基礎が大切である理由と、具体的な勉強方法についてお伝えしたいと思います。

基礎が大切である理由

高校生・受験生の皆さんは、最終的には、志望大学の入試問題を自力で解けるようになる必要があります。そのためには、まず、「計算力」と、「教科書レベルの問題を自力で解き切れる力」が、必要不可欠です。

これらのことについて、野球選手を例にして考えてみましょう。

野球で甲子園を目指す選手は、いつも練習試合や紅白戦などの試合に即した練習ばかりをしているでしょうか。そうではありませんね。どれほどレベルの高い選手であっても、走り込みや素振り、ゴロを捕る練習など、基礎的な練習を大切にしています。これは、プロ選手であっても同じだと思います。実際、以前イチロー選手を特集した番組を見たことがありますが、あのイチロー選手でさえ、走り込みも素振りも行なっていました。

数学の勉強における「計算力」は、野球選手にとっての体力に相当します。さらに、「教科書レベルの問題を自力で解き切れる力」は、素振りや捕球などの基礎技術を確実にできる力に相当すると言えるでしょう。これらの力が無ければ、試合を勝ち抜いていくことはできません。このように考えれば、基礎がいかに大切であるか、分かっていただけると思います。

大学入試で出題される問題の多くは、実は、教科書傍用問題集に載っているような基礎的ないし典型的な事項が複数組み合わせられてできています。したがって、それぞれの事項をしっかりマスターしていれば、多くの問題は、多少の試行錯誤(図を描いたり、具体的な場合について計算してみたり)を行うことによって、解法の糸口が見えてくるものです。

そして、解法の糸口を見つけるための試行錯誤において、そして解答の方針を立てた後の答案作成において、重要になるのが数学の基礎体力とも言うべき「計算力」です。

計算力は、計算を数多くこなすことによって身につきます。近道はありません。私が塾生の皆さん(受験生でさえ!)に対して、まずは教科書傍用問題集を解きましょう、とお伝えする理由は、まさに、基礎的ないし典型的な解法パターンをマスターしてもらうと共に、数多くの問題を解くことを通じて計算力を身につけてもらいたいと考えているためです。これらのことによって、将来的に応用問題を解いていくための土台が出来上がります。

それでは、さっそく、教科書傍用問題集にどのように取り組んでいけば良いのか、具体的にお伝えしたいと思います。

教科書傍用問題集への取り組み方

(1)問題を解く
まず、学校で習った範囲に対応する問題を一通り解きます。多くの教科書傍用問題集は、基礎問題(A問題やステップ1など)と標準〜応用問題(B問題やステップ2など)にレベル分けされて問題が数多く配列されていると思います。数学が得意な人は、ぜひB問題まで取り組んでみましょう。数学があまり得意でない人は、A問題だけでもOKです。
また、現在受験生で、時間的に余裕がない方は、問題集の「*」マークの問題(各単元をマスターするために解くべき必要最小限の問題)のみに取り組んでも良いでしょう。

教科書傍用問題集を解く際のポイントは、正確さを失わない範囲でできる限り素早く解こうと試みることです。そのように自分に適度に圧をかけることによって、問題を解く際に緊張感が生まれます。数学に限りませんが、勉強においてはこの緊張感が無いと、学習内容が身につきにくいと思います。

また、問題を解いていく中で、解けない問題も出てくると思います。2〜3分考えても方針が立たない問題は、あまり粘らずに、教科書を確認しましょう。それでも解けない場合は、その問題に印を付けて(次の(2)で詳しく説明します)、そこでやめます。

(2)答え合わせをする
問題を解いたら、答え合わせをします。大問を1つ解くごとに答えあわせをすると良いでしょう。

さて、ここからが重要です。

解けなかった問題と、解けたけど自信がない問題に、異なる印を付けます。私の場合は、解けなかった問題には◯印を、解けたけど自信がない問題には△印を、それぞれ該当する問題番号のところに付けました。解けた問題には印をつけなくて構いません(これらの無印の問題は、これ以降は解きません)。○や△の印の付いた問題が、自分にとって重要なマスターすべき問題です。

さらに、答え合わせの際にぜひ行なっていただきたい、とても重要なことがあります。それは、解けなかった問題(◯印の問題)の解き直しです。

時々、次のような生徒さんを見かけることがあります。それは、解けなかった問題について、解答をノートに書き写している生徒さんです。

確かに、解答を書き写していると、勉強しているぞ!という気分になりますし、勉強を終えた時にも満足感が得られるとは思います。

しかし、この書き写しの作業は、時間がかかる上に、残念ながらほとんど効果がありません。なぜなら、勉強のゴールは、満足感の得られるノートを作ることではなく、解けなかった問題が再び出題されたときに自力で解き切れるようになることだからです。

勉強においては、このことを見失わないようにしましょう。

解答をノートに書き写す作業において、このゴールに到達できれば良いのですが、実際のところは、書き写す作業それ自体に熱中してしまって、解答の流れを頭にインプットするには至らないケースが多いように見受けられます。

それでは、解けなかった問題(○印の問題)はどのようにすれば良いのでしょうか。それは、解答を読んで解法を理解したら、その場で、解答を見ずに、もう一度自力で解くことです。

解けなかった問題について解答を確認しているときには、多くの場合、「なるほど、たしかにそうすれば解けるな。」という納得感があると思います。解答は、理路整然と説明がなされているので、このような納得感が得られるのはある意味では当然です。

しかし、ここに落とし穴があります。それは、解答を読んで納得できれば、その問題が解けるようになるのだ、と誤解してしまうことです。しかし、これは大いなる誤解です。残念ながら、解答を読んで納得することと、その解答を自力で再現できることとは、別物なのです。実際に、解答を見ずに問題を解き直すと、さっきはあれだけ納得したはずなのに、なぜか最後まで解き切れない、という事態に頻繁に遭遇することでしょう。だからこそ、答え合わせをした直後に、解答を見ずに、もう一度自力で解くことが、非常に重要なのです。

この解き直しによっても最後まで解き切れない問題は、もう一度答えを確認し、再び、答えを見ずに、その場で解き直します。このプロセスを、自力で解き切れるようになるまで繰り返します(自力で解き切れても、○印は消さないでください)。なお、△印の問題は、この段階で解き直す必要はありません。

解けない問題を解けるようにするプロセスが「勉強」

私は、解けない問題を解けるようにするプロセスこそ「勉強」である、と考えています。

したがって、少し極端な言い方かもしれませんが、上記(1)の問題を解くプロセス自体は、「勉強」ではなく、繰り返し解くべき問題をピックアップするための「作業」であると考えています(もちろん、計算力を高めるという点では効果があります)。「勉強」と呼ぶべきなのは、解けなかった問題を自力で解けるようにする(解き直す)プロセスだと考えています。

(3)復習する
そして、後日、○印と△印を付けた問題を、もう一度解き直します。私は、数学は毎日勉強していましたので、翌日の数学の勉強を始めるときに解き直すようにしていました。

このとき、スラスラ解けたら○や△の印を消します。それらの問題は、今後は解き直しを行いません。また、○印の問題(解けなかった問題)が今回は辛うじて自力で解けたら、その問題の印を△に変更します。

ここまでで、上記(1)で解けなかった問題(○印)については2回、辛うじて解けた問題(△印)については1回、それぞれ解き直すことになります。それ以降の解き直しは、各単元が終わるごとに行うと良いでしょう。

このようにして○印と△印のついた問題を繰り返し解いていくと、基礎的ないし典型的な事項が頭の中で有機的につながっていくからだと思いますが、初めて見る問題に対しても、解答の方針がひらめくようになります。その結果、数学の成績が飛躍的に向上します。ここまで説明した方法に沿って問題集に取り組んでいれば、この段階に必ず到達できます。それまでは、問題を1つずつ潰していくゲームだと思って、2周、3周と、問題集に取り組んでみてください。

2周目以降は、○印と△印の付いた問題のみに取り組んでいけばOKです。したがって、2周目は、1周目のときの半分くらいの時間しかかからないでしょう。3周目は、さらにその半分くらいの時間で終えられるでしょう。

このようにして、勉強が進むほど、どんどん加速して問題集を進められるようになります。

教科書傍用問題集への取り組み方は、以上のとおりです。私は、この方法が最も効果的に成績を上げる勉強法だと考えています。

ここまで読んでいただいて理解していただけたと思いますが、基礎固めの時期において、量をこなすことはとても大切です。残念ですが、それほど勉強せずに成績を効率よく上げる魔法の方法は、私は知りませんし、おそらく存在しないと思います。結局のところ、1問1問に対して丁寧に取り組んでいくという一見遠回りな勉強法こそが、結果的には最短で成績を上げることになるのです。

最後に、1つだけお伝えして、今回のお話を終えたいと思います。

それは、解ける問題が少しずつ増えてきて(○や△の印の問題が減ってきて)、解くことが楽しくなってくるときがやってきます。その感覚が出てくると、間もなく、成績がグンと伸びます。その時は、遅かれ早かれ必ずやってきます。このことを信じて、一つずつ、問題をクリアしていきましょう。

それでは、今回のお話のまとめです。

・教科書傍用問題集に取り組んで、基礎固めをしましょう。問題を解く際には、正確さを失わない範囲で早く解いてみましょう。

・問題を解く際には、できなかった問題に印(○や△)を付けながら進めましょう。

・○印を付けた問題は、まずは解答を見ずにその場で解き直し、さらに、別の日にも解き直しましょう。

・問題を解くことは「作業」であり、解けなかった問題を自力で解けるようにするプロセスこそ「勉強」です。

次回は、学校の授業の受け方とノートの使い方についてお話したいと思います。

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