学習塾Dear Hopeの数学担当 伊藤大幸です。
センター試験が終わりました。
受験生の皆さん、お疲れさまでした。
センター試験が終わると各大学の個別試験が始まりますので、今年もいよいよ受験シーズンに突入しました。
特に国立大学を受験する皆さんは、ここからの1か月でぐっと実力を高められる可能性がありますので、最後まであきらめずに、そして焦らずに、やるべきことを一つずつクリアしていきましょう。
さて、今のうちに、センター試験の数学についてコメントを書いておこうと思います。
センター試験の翌日に、私も数学I+AとII+Bの問題を解きました。
2020年度からの入試改革で、思考力、判断力、表現力を重視するということが文科省より発表されていますが、すでに今年の問題にその片鱗が見えているなと感じました。
暗記ばっかりじゃだめだよ、きちんと本質的な考え方を習得しなさいよ、というメッセージが聞こえてくる問題でした。IA、IIBとも、解法のパターンを暗記するだけでは80点止まりで、90点以上、特に満点を目指すには、各単元を掘り下げて理解していないといけないと思います。
もちろん、すべての問題が難しかったわけではありません。基礎的な問題や、丁寧な誘導がついていてその流れに乗れば難しくない問題も多くありました。そのような問題でバランスがとられていたので、平均点自体は平年並みかなと思います(1/25の中間集計で、数学IA:59.69点、数学IIB:53.25点)。
その一方、思考力などが必要だなと感じた印象的な問題は、下記です(多いですね!)。
【数学IA】 確率、データの分析、整数
【数学IIB】 微分積分、数列
<確率>
赤と白の2つの袋のそれぞれに赤玉と白玉が混ぜて入れられており、一方の袋から1つの玉を取り出したときのその玉の色が、次の試行で赤と白のどちらの袋から球を取り出すかを決定づける、というよくあるタイプの問題設定でした。
この問題は、後半が、難関大の確率の問題としてよく出題される「確率漸化式」の考え方を利用して解く問題構成になっていました。
漸化式は範囲外(数学B)の単元ですから、もちろんきちんと誘導がつけられていましたが、それでも確率漸化式の考えになじんでいない受験生にとっては、解きにくい問題であっただろうと思います。
このような問題が出題された背景としては、おそらく、思考力を問いたかったのだと思います。一般に、センター試験の確率の問題は、「がんばって数え上げればなんとかなる」というチカラワザ的な問題がよく出題されていました。このような問題は、それほど思考力は要求されません。
一方、確率漸化式のタイプの問題は、チカラワザではどうにもなりません。少し難しい話になってしまうのですが、「ある試行」と「その直前の試行」とがどのような関係になっているかを数式化する(漸化式をつくる)ことによって、抽象的に問題を処理していくというやや高度な(そして非常に強力な)解法です。
これは、暗記でどうこうできる問題ではありませんので、その場で考えて処理するしかありません。
<データの分析>
前半は比較的簡単でした。後半は、あるデータ列(X)を新たなデータ列(Y=aX+b)に変換するという、よくあるタイプの問題でしたが、最後の問題が印象的でした。
一般に、あるデータ列Xを新たなデータ列Y=aX+b(この式を①とします)に変換すると、平均値は「(Xの平均値)+b」になり、分散は「(Xの分散)×aの2乗」になり、標準偏差は「(Xの標準偏差)×|a|」になります。このことは、平均値、分散および標準偏差の定義式から導かれます。
今年の問題は、Yが、「{X-(Xの平均値)}÷(標準偏差)という式(この式を②とします)で定義されていました。つまり、式①において、a=1/(標準偏差)であり、b=-(平均値)/(標準偏差)ということになります。ここまでは読み取れると思いますが、問題はここからです。
式②の変換を行うと、データ列の標準偏差及び分散が「1」になります。つまり、変換前のデータのばらつきがどのようなものであれ、式②によってデータのばらつき具合が整えられるわけです。この感覚を持っていないと、最後の問題は答えられなかったのではないかと思います。
厳密には、標準偏差の定義式を利用して考慮することになりますので、ここでは深入りせずにとどめておきます。なお、式②は、模擬試験などを受けたときに「偏差値」を算出するために利用される式になっています(正確には、式②×10+50=偏差値)。
<整数>
この問題は、個人的に、今年のセンター試験の問題の中で、解いていて一番楽しい問題でした。結構長い問題で、いろいろ問われるのですが、どうしてこういうことをやらされているんだろうと思いながら最終問題を解くと、すべての伏線が回収されるという!まるでよくできた短編ミステリーを読んだかのようで、思わず興奮してしまいました(笑)。
テーマ自体は、1次不定方程式で、頻出のテーマです。しかし、計算量がやや多かったので、解きなれていないと(2)のあたりで沈没してしまったかもしれません。
最後の問題のポイントは、連続する3つの自然数ということでしたので、49xと23yとの差の絶対値が1または2であればよいから(2)の結果を利用すればよい、ということに気づくことでした。これは整数問題をある程度解きなれていないと気づきにくかったかもしれません。まさに、暗記ではどうしようもない問題でした。
<微分積分>
数学IIの微分積分、特に積分の面積の問題では、やみくもに計算を頑張るのではなく、因数分解や解と係数の関係を利用したり、面積公式(6分の1公式や12分の1公式)をうまく利用したりすることが、問題を時間内に処理し切るためのポイントになります。
このことは頻出事項ですので、特に今年の問題に限ったことではありません。この点については、よく訓練しておく必要があるでしょう。
<数列>
後半、謎の漸化式{an}が登場し、さらにこの漸化式を解くための置き換えの式{bn}が定義されていました。この{bn}をどのように利用するかがポイントでした。このような置き換えの式が定義される典型的なパターンとしては、分数タイプの漸化式があります。しかし、この分数タイプの漸化式は、学校で重点的に扱われることはあまりないでしょう(特に文系の場合)。今年のIIBのセットの中で、最も難しい問題だったと思います。
ここでは、漸化式の解き方の根本を理解していないと解けなかったのではないかと思います。つまり、漸化式を解くためには、与えられた漸化式を以下の2つのパターンのいずれかに変形する必要があります。
- 等比数列 つまり、An+1=r・An という形
- 階差数列 つまり、An+1=An+<定数 or (nの式)> という形
漸化式にはいろいろなパターンがありますが、本質的には上記2つのパターンのいずれかに変形して解いていきます。たとえば、皆さんがよく目にする「An+1=An=α」として特性方程式を作る作業も、等比数列型の漸化式に変形するための手続きなのです。このような事項をしっかりと理解していないと、この問題には対応できなかったのではないかと思います。
漸化式は、理系の場合、数学IIIで扱う「数列の極限」に深くかかわっています。このため、漸化式を解くということはどういうことなのか、について深く理解することが重要です。
印象的だった問題についていくつか所感を述べました。もちろん、多くの問題は基礎~標準レベルの問題でしたので、上述した問題が解けなかったとしても、ある程度の点数は取れたかと思います。しかし、高得点、あるいは満点を目指す場合には、なぜその公式が成り立つのか、あるいは、なぜそのような解法が利用されるのか、という各単元の本質的な考えを理解することが重要であると感じました。
また何か気づいたことがあれば、ブログにてコメントをしたいと思います。
それでは今日はこのへんで。
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