こんにちは。
品川区武蔵小山駅より徒歩4分
学習塾Dear Hope 数学担当の伊藤です。

 「大学への数学」(研文書院)という参考書があります。すでに絶版になってしまいましたが,大学受験数学の名著です。ちなみに,同名の月刊誌「大学への数学」(東京出版)ではありません。ハードカバーで黒い表紙の「大学への数学」です。いかにも硬派ないでたちです。

 この「大学への数学」には,いわゆる「黒大数」と呼ばれている,ツヤツヤで真っ黒の表紙の「大学への数学」と,マットな質感(でも色は黒)の表紙の「大学への数学・ニューアプローチ」という2種類のシリーズがあります。

このうちの「大学への数学・ニューアプローチ」を見返していたところ,あるコラムを見つけ,強く頷くものがありましたので,以下に紹介したいと思います。

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「基礎はなぜ大切か」

「基礎が大切」とよく言われます。しかし,応用できなければ意味がないのも事実ですから,基礎の大切さを強調する言葉に,つい疑問をさしはさみたくなるというものです。

 見知らぬ土地で道に迷ったとき,私たちは大きな道路や鉄道の駅を探します。そして,「ここまで来れば,あとは大丈夫」と思います。この「あとは大丈夫」が基礎の力です。

すなわち,道路を整備し鉄道を張り巡らすことが,基礎力をつけれることだとすれば,幹線道路や鉄道の駅に何とかしてたどり着く力が応用力であると言えるでしょう。

応用できなければ基礎は無意味ですが,基礎がなければ私たちは見知らぬ土地で途方に暮れてしまいます。だから私たちは,系統的に基礎を学ばなければならないのです。

一方,応用力をつけるための系統的な方法は存在しません。巷では,「重要な道路の見つけ方」や「便利な駅の探し方」といった誘い文句が耳をくすぐりますが,それらを信じるわけにはいきません。

例えば,「山で道に迷ったら川筋に沿っておりよ」という教えがありますが,水は低きに流れるので確かに一理あるとは言うものの,その道の先は滝と崖かもしれません。

わが身を救うものは,鋭い感覚と判断力,そして試行錯誤しかなく,またこのような力を養うには,結局自分の足で歩くほかありません。

(出典:研文書院「大学への数学・ニューアプローチ 数学ⅢC」 P108)

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 短い文章ですが,基礎力の大切さについて,実に的を射た指摘だと思います。

 大学入試では、レベルが上がるほど,見たこともない問題に出くわします。これはいわば,見知らぬ土地にポンと放り出され,さあ,ここから目的地(正解)に向かってたどり着いてみなさい,という冒険に例えることができます。

 この冒険を無事にクリアするためには,いま自分が置かれた場所から大きな道路や駅を見つけて,正しい行き先のバスや電車に乗る必要があります。この際,道路や鉄道の路線が密に張り巡らされているほど(しっかりとした基礎力を持っているほど),スムーズに目的地にたどり着けるということは明らかでしょう。

したがって,基礎力は、非常に大切です。

 また,応用力について,引用したコラムでは,「結局自分の足で歩くほかありません」と結論付けています。

そうです!まさにそうなのです!

これは,自分の頭でしっかりと考える,ということです。

数学に限らず,学力は,ある程度までは暗記によって高められます。

 しかし,暗記には限界があります。なぜなら,単なる暗記では,暗記したとおりの問いかけに対しては有効ですが,少しひねった問題や思考力が求められる問題には無力であるケースが多いからです。

 このため,一通り学習を終えた後で構いませんので,ある公式やテーマについて,なぜそうなるのか,自分なりに検討して理解を深めることがとても大切だと思います。このように「自分の頭で考える」ことによって,単なる暗記を超えて,その公式やテーマの本質的な部分を習得することができます。この結果,記憶した公式や解法を,いろいろな角度からの問いかけに対して応用させることができるようになります。

 たとえば,二次方程式について,解の公式があります。あの公式をきちんと導出できますか?

 二次方程式の判別式が負のとき,なぜ実数解は存在しないのか,説明できますか?

 あるいは,二次関数の単元で,ある関数y=f(x)をx軸方向にp,y軸方向にqだけ平行移動したグラフの式は,y-q=f(x-p)と表されます。このことをきちんと説明できますか?

 また,図形の単元で,正弦定理や余弦定理を学習したと思います。これらの定理をきちんと導出できますか? ・・・などなど。

 遠回りに見えるかもしれませんが,例えば東大や京大など最難関の数学に対応するためには,このような地道な作業が欠かせません。最難関の数学では,問題集でよく見かける問題がそのまま出題されることはなく,問題ごとに,自分の頭で考えて解法の糸口を見出していくことが必要です。このときに頼りになるのは,表面的な知識ではなく,様々な公式や解法に対する深い理解なのです。

 このようなことを,一つ一つ,自分の手と頭で検討していくことにより,道路や鉄道の路線がどんどん密に張り巡らされていきます。

 さらに,基礎的な公式を導出するプロセスや,有名問題の解法には,数学的な発想のヒントが詰まっています。ですので,なぜそのような式変形を行うのか,なぜそのような発想が出てくるのか,なぜこのような断り書きが必要なのかなどについて,よく注意しながら解説を検討してみてださい。

 このような検討のプロセスを通じて,基礎力が高められるとともに,数学的なセンスも養われて応用力も高まっていくはずです。

 高い建物を建てるためには,深い基礎が必要なのですが,実は,基礎をしっかりと固めていくと,ある時,その上に高い建物が建っていることに気づくのです。



学習塾Dear Hope 数学講師 数学は全国模試1位、東北大の二次試験では全問完答にて合格