「迷う力」が導いてくれた東大合格 ~東大推薦生の講師に聞きました~
こんにちは。
大学受験対策Dear Hopeの伊藤智子です。
今回、東大の学校推薦型選抜で文科Ⅲ類に合格され、教育学を学ばれているMさんに、東大の推薦入試について記事を書いていただきました。Mさんは現在、当塾で国語・小論文の授業を担当されています。
記事を依頼した時、Mさんは「私は、世の中の人たちが思い描いている”東大推薦生”には当てはまらない気がして、これまで記事の執筆やインタビューなどはお断りすることが多かった」と話してくれました。
Mさんの言う、世の中の人が抱く東大推薦生のイメージとは、たとえば「科学オリンピックの入賞者」などであり、また、高校が総力を挙げてサポートして合格されたような推薦生です。(実際に、特に地方の公立高校などからは、高校1年生の時から学校の手厚いサポートを受けて合格されるケースも少なくありません)
Mさんは、科学オリンピック入賞などの華やかな受賞歴があったわけではなく、また、高校にもあまり情報がなかったため、当初は、必ずしも推薦に前向きな先生方ばかりというわけではなかったそうです。
けれども、そうした条件の中で東大推薦にチャレンジした経緯や、合格につながったプロセスこそ、多くの人の参考になると、私は思いました。
きっと読者の皆様の、進路選択や受験対策にも参考になる点がたくさんあると思います。
ぜひ最後までお読みいただけたら嬉しいです。
目次
自分に合った学び方ができる大学を探し、東大を志望校に
東大進学を志したのは、高校2年生の10月です。元々幅広い学問分野に興味があり、文理融合系の学部(具体的には、京都大学総合人間学部など)を志望していた時期もあったのですが、高校の授業や課外活動に取りくむ中で、「異なる人びとが互いに歩み寄るために必要な学びの姿勢とはどのようなものなのだろうか」「そもそも、人が学ぶとはどのようなことなのだろうか」といった問いに興味を持ち、大学では、教育学を中心に据えつつ、多角的に学びを深めたいと考えるようになりました。
複数の大学・学部のパンフレットや授業シラバス、先生方の著書などから、自分なりに教育・研究内容を探った結果、原理的な問いと現場での実践を行き来できるという点で、私に合った学び方ができるのは東大なのではないかという結論に至りました。そして、部活を引退したタイミングで、東京大学文科三類を志望校に決めて、受験勉強を始めました。
東大推薦を目指したきっかけ
推薦入試に挑戦しようと思った一番の理由は、東大の推薦入試に向けた準備が、高校時代までの学びをまとめるよい機会になると考えたからです。東大の推薦入試は、学部によって出願資料が異なるのですが、私が目指していた教育学部は、志願理由書に字数制限が設けられていませんでした。これは、自分自身の学びの「点と点を線でつなぐような」機会を作ったうえで、「大学ではその学びを面に展開していくような学び方がしたい」と考えていた高校3年生の私にとって魅力的な条件でした。いつの間にか、挑戦しないという選択肢はないと感じるようになっていました。
なお、一般入試と推薦入試の併願を漠然と考え始めたのは高校2年生の1月、推薦入試の存在を知ったのは高校2年生の8月でしたが、最終的に学校推薦型選抜への出願を決めたのは、高校3年生の夏休みでした。
このような遅い時期になったのは、東大の教育学部で学びたいという強い気持ちはあったものの、新型コロナウイルスの影響もあり、自分は出願条件を満たしていないのではないかという迷いが大きかったためです。
推薦にチャレンジする中で得たことや大変だったこと
一般入試に向けた勉強と推薦入試の準備の両立が難しかったことは、言うまでもありません。推薦入試の出願直前に東大の冠模試があったり、高校最後の定期試験の直前に推薦入試の一次試験の合格発表があったりと、常に予定管理が必要でした。
私の場合、推薦入試の対策と一般入試の対策との両立は不可能だと分かってからは、それらを両立することよりも、どちらかに全力を注ぐことを重視する作戦に切り替えました。
東大で学びたいという思いが強まるほど、一般入試でも推薦入試でも合格できなかったら…と想像することも増えていきました。しかし、 推薦入試のために、「私はなぜ東大で学ぶ必要があるのか」という問いに向き合い、自分自身や他者と対話を重ねた時間や、自分の言葉で表現した経験を得たことは、12月の推薦の二次試験以降、一般入試に向けた勉強に集中するうえで、大きな支えとなりました。
余裕がなかったというのも大きいですが、気が抜けたり、なんのために勉強しているのかわからなくなったり、といったことが一度もないまま、2月の受験本番シーズンを迎えることができました。
推薦で合格できた要因だと思うことは?
わからないというのが正直な答えですが、あえて挙げるとすれば、「迷う力」が私を合格に導いてくれたのではないかと思います。
専門的な知識や、学術的に価値のある発見をした経験はなくても、自分の中で生まれた問いを持ち、人と関わりながら、その問いに対する答えを常に変化させること(=考え続けること)を苦と感じない、探究的に学ぶ姿勢を評価していただけたのかなと思っています。
東大に入ってみて感じる、学校推薦型選抜のメリットや注意点
どの学部にも共通するメリットは、前期課程のうちから、「早期専門教育」を受ける機会が設けられていることです。教育学部では、1年生の秋学期から、後期課程の科目を履修することができ、私(現在2年生)もこの制度を活用しています。
例えば、今学期は、社会教育や教育行政のゼミ形式の授業に参加しています。知らないことだらけですが、考える枠組みが増えると、実際の議論や自分自身の経験に対して新しい視点を持つことができ、たのしさを感じています。
このように、推薦生は一般入学生よりも早いタイミングで専門教育に触れることができますが、学部・学科選択も一足早くしなければなりません。また、原則として推薦入試で出願した学部に進学しなければならないことを理解したうえで出願する必要があります。
これから大学受験を迎える後輩へのメッセージ
「受験は、自分のことをどれだけ知れるかにかかっていたんだなって思った。」
これはかつて、大学受験を終えたばかりの高校の部活の先輩から聞いた言葉です。受験生の頃、よく思い出していた言葉の一つです。
大学受験をめぐる皆さんの挑戦が、記憶に残る物語になりますように。応援しています。
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