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2022年 東京工業大学 入試問題(数学)レビュー

Posted by 伊藤 大幸 on
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こんにちは。
品川区/オンライン 大学受験対策
学習塾DearHope 数学担当の伊藤です。

今回は,2022年の大学入試問題から,東京工業大学の数学をレビューしたいと思います。

今年も180分の試験時間に対して5問の出題がありました。

大まかな内容は,以下の通りです。

〔第1問〕

二次方程式の係数が変化した場合において,解のとり得る値の範囲を複素数平面上に図示する問題

〔第2問〕

3文字の基本対称式(a+b+c,bc+ca+ab,abc)を題材にした,最大公約数に関する整数問題

〔第3問〕

パラメータ表示された2つの動点を結ぶ線分を斜辺とする直角三角形において,直角に対応する頂点の軌跡に関する問題

〔第4問〕

複素数平面上の変数を含む写像に関し,変数が変化したときにその写像(円)の虚軸に平行な直径が通過する領域を図示する問題

〔第5問〕

確率に関連させた,積分と極限の融合問題

なんと5問のうち3問も(!)軌跡や領域に関する出題でした。

解いてみた所感としては,純粋に「楽しい」問題でした。

個人的に領域図示や軌跡の問題が好きなので(いろいろな式を処理して図柄を浮かび上がらせるプロセスが,ものづくりの職人になったようで楽しいのです),3つもあって楽しめました。

それと,やはり最後の第5問ですね。意味を考えさせつつ複数の文字をひとつずつ処理(消去)していって最後に何が残るか…。プレゼントの包み紙をほどいていくようなワクワク感がありました。

まず第1問は,東工大としてはよくあるタイプの領域図示でした。最高次の係数が1である二次方程式の1次の係数と定数項がそれぞれ-1から1まで動くときに,その二次方程式の解である複素数zがとり得る値の範囲を複素数平面上に図示せよ,という問題です。

本問は,丁寧に場合分けを行いながら処理すればOKですので,詳細は省略します。ただ、解ききるには「馬力」がいる問題ですので、この手の問題に対する処理をテキパキ行えたかで差がついたと思われます。

次に,第2問です。

(2022年 東京工業大学 入試問題より引用)

きれいな設定の整数問題です。

(1)は,いろいろと解法はあると思いますが,例えば,三次方程式の解と係数の関係を利用して,背理法により証明する方法がありそうです。

まず,背理法のセオリーに従い,a+b+c,bc+ca+ab,abcの最大公約数が1ではないと仮定します。

簡単のため,a+b+c=p,bc+ca+ab=q,abc=r としましょう。

すると仮定から,p,q,rは,2以上の共通の約数gをもちます。

すなわち,k,ℓ,mを整数として,

p=kg,q=ℓg,r=mg…① と表すことができます。

次に,解と係数の関係から,a,b,cは,xについての三次方程式

-px+qx-r=0…② の解であると言えます。

これら①②から,x-kgx+ℓgx-mg=0,つまり

=(kx-ℓx+m)g…③ を得ます。

さて,a,b,cは方程式②の解ですから,③の解でもあります。ゆえに,aは

=(ka-ℓa+m)g (右辺はgの倍数)

を満たすから,aはgの倍数⇒aはgの倍数(対偶を考えれば明らか)となります。

同様にして,bもcも,gの倍数であることが分かります。

ところが,ここで得られた結論は,a,b,cの最大公約数が1であることに矛盾します。

ゆえに,仮定は否定され,題意が示されました。

次に(2)です。因数分解の公式から,

+b+c=(a+b+c)-2(bc+ca+ab)=(pの倍数)-2q

3+b3+c3=(a+b+c)(a+b+c-bc-ca-ab)+3abc=(pの倍数)+3r

と変形できます。

(1)より,p,q,rの最大公約数は1なので,3つの式(a+b+c(=p),a+b+c,a+b+c)の最大公約数はpの約数でなければなりません。

そうであるならば,a+b+c(=p)とa+b+c(=p-2q)の最大公約数は,pと2qの最大公約数に等しいということが言えます。同様に考えることにより,結局,3つの式(a+b+c,a+b+c,a+b+c)の最大公約数は,pと2qと3rの最大公約数であると結論づけることができます。

さて,ここで,最大公約数が5以上の素因数を含むと仮定すると、p、q、rのすべてが5を素因数にもつことになり(1)に矛盾します。したがって、最大公約数に含まれ得る素因数は、2と3に限られることになります。

ゆえに最大公約数は,6の約数であることがわかり、ここから答えにたどり着くことができます。

整数問題は一朝一夕に理解を深めることが難しい分野です。しかし,理解が深まってくると「おもしろい」と感じる分野の1つだと思います。

例えば,剰余の基礎知識の1つに,「a=bq+r(aをbで割った商がqで余りがr)」という関係式があります。この式で重要な点は,次の事実です:

「aとbの最大公約数はbとrの最大公約数に等しい。」

このことに基づき,我々は「ユークリッドの互除法」という操作で最大公約数を求めることができるわけですが,なぜこのような事実が成り立つのでしょうか。

あるいは,剰余と言えば「合同式」を思い浮かべる方も多いと思いますが,なぜ合同式の演算法則が成立するのでしょうか。

このような基本事項を一つ一つ確認して整数特有の論理になじんでいけば,きっと整数問題を得意にすることができると思います。

次に,第3問です。

(2022年 東京工業大学 入試問題より引用)

本問は,さまざまな角度から検討ができそうな問題です。今回は,有名定理や座標変換で「遊びながら」考察してみましょう。

まず,問題文から,以下のような図が書けます。

AB=1,∠OBA=t,四角形OAPBは円に内接する(∵∠O+∠P=π)ことに気づくと良いでしょう。

まず(1)です。トレミーの定理を使ってみましょう。

トレミーの定理とは,円に内接する四角形において成り立つ定理であり,「向かい合う辺の積の和(OA・BP+OB・AP)は対角線の積(OP・AB)に等しい」というものです。

△PABは斜辺(AB)が1の直角三角形であることに注意すると(図に示すようにBP=sinα,AP=cosαが成立),トレミーの定理より,

OP=sint・sinα+cost・cosα=cos(t-α)…①

また,円周角の定理(四角形OAPBは円に内接する)より∠POA=∠PBA=π/2-αなので,点Pの座標を(x,y)とすると,

x=OPcos(π/2-α)=sinα・cos(t-α)

y=OPsin(π/2-α)=cosα・cos(t-α)

となります。

与えられたαとtの定義域からx≠0が言えるから,yをxで割ることができて,

y/x=cosα/sinα つまり,「y=(1/tanα)x」(直線)

よって点Pが直線上を動くことが示され,題意の通りであることが分かりました。

次に(2)です。

tが0からπ/2まで動くときのxとyの増減を調べればOKです。単純な増減になので微分する必要はありません。詳細は省略しますが,(1)で求めた直線上において,t=0のときPは(sinαcosα,cosα)にあり,ここから原点とは反対方向に直線上を移動を開始し,t=αで最も原点から遠ざかります。

その後,今度は原点に近づく向きに移動し,t=π/2のときPは(sinα,sinαcosα)まで戻ってきます。

あとは直線の傾きから,道のりを求めれば完成です。

さて,(3)に移ります。

ここでは極座標を利用して考察してみましょう。

問題で与えられた連立不等式を極座標で表すと,

+y=r,x=rcosθ,y=rsinθ の関係から,

(第1式) r-rcosθ<0 つまり r<cosθ

(第2式) r-rsinθ<0 つまり r<sinθ

となります。

ゆえに,点Pが領域Dに入らないことを示すためには,点Pの軌跡を極座標で表したとき,

「r≧cosθまたはr≧sinθ」

が成り立つことを言えばよいわけです。

さて,(2)で求めた点Pの軌跡から,OPの長さについて,

OP≧min{t=0のときのOPの長さ,t=π/2のときのOPの長さ}

  =min{cosα,sinα} (cosαとsinαのうち大きくない方)

であることが言えます。

したがって,点Pの軌跡を極座標で考察すると,r=OP,θ=∠POA=π/2-α(つまりα=π/2-θ)から,

r≧min{cos(π/2-θ),sin(π/2-θ)}=min{sinθ,cosθ}

すなわち,「r≧cosθまたはr≧sinθ」であることが分かりました。

これが示すべきことでしたから,題意が示されました。

極座標は,苦手に感じる受験生の方も多いと思います。しかし,xy座標系では煩雑になる計算が極座標系ではいとも簡単に処理できる,という場面も少なくありません。また,求積問題でも活躍します。ぜひ,理解を深めておきましょう。

最後に第5問です。

(2022年 東京工業大学 入試問題より引用)

まず問題文が長いですね!

しかも後半には、この問題の出だしの雰囲気に似つかわしくない「試行」という単語がちらっと見えてしまいます(笑)。

気を取り直して、(1)から見ていきましょう。

(1)は,与えられた関数f(x)を積→和の公式により

f(x)=2(1+sin2ax)/3

と変形してから計算を行うと良いでしょう。

その結果,aについての方程式「a+cos2a-1=0」が得られるため,あとはこの左辺をg(a)とおいて微分し,増減を調べれば容易です。

(2)もよくある問題です。

f(x)の原始関数をF(x)とすると,中辺(bからcまでの定積分)は「F(c)-F(b)」です。F(x)は閉区間[b,c]で微分可能ですから平均値の定理により,

F(c)-F(b)=f(p)(c-b)

を満たすpがbとcの間に存在することが言えます。

aとpのとり得る値の範囲からf(x)は増加関数であることが分かり,b<cから

f(b)≦f(p)≦f(c)

あとはこの両辺に(c-b)(>0)を乗じることにより証明が完成します。

さて,「試行」が登場する(3)に移ります。ここから少し問題設定が複雑になります。

重要な点は,Sn,k,iの意味を正確に把握することです。これは,ルーレットをk回まわしてⅰが出た「回数」ですから,その意味から当然,

Sn,k,1+Sn,k,2+Sn,k,3+・・・+Sn,k,n=k…①

が成立することになります。

したがって,両辺をkで割ると

(Sn,k,1/k)+(Sn,k,2/k)+(Sn,k,3/k)+・・・+(Sn,k,n/k)=1

となります。

この式において,kを無限大に近づけると,問題文の(**)より,

となり,題意が示されました。

①の関係式さえつかめれば、「試行」も怖くありませんでしたね。

では,最後の(4)です。

まず,問題文にある「(3)の[試行]において出た数の平均値An,k」を考えましょう。

「出た数」の個数はk個ですから,平均値は,

n,k=(1・Sn,k,1+2・Sn,k,2+3・Sn,k,3+・・・+n・Sn,k,n)/k

   =1・(Sn,k,1/k)+2・(Sn,k,2/k)+3・(Sn,k,3/k)+・・・+n・(Sn,k,n/k)

となります。

提示されれば当たり前に思われるかもしれませんが、この式を、試験のその場できちんと書き下せないと、本問はお手上げです。

上の式においてk→∞とすると,(**)により

さて,ここから伏線の回収に入ります。

(2)の不等式をまだ使っていませんでした。本問は、(2)の不等式を利用して,ハサミウチの原理に持ち込みそうですよね。というわけで,やってみましょう。

以上から,求める極限値は,式[A]により与えられることが分かります(各自計算してみましょう)。

本問は,隠れた条件式「Sn,k,1+Sn,k,2+Sn,k,3+・・・+Sn,k,n=k」を利用することがポイントでした。さらに,問題文で与えられた関係式(**)をうまく使いこなすことが必要です。まさに本問も,解法パターンの暗記ではなく,その場で考えることが大切な1問でした。ただ、誘導が丁寧なので、東工大としては標準的なレベルだったと思います。

東工大は,他の大学と比較して1問にかけられる時間が10分ほど長い(1問当たり36分)ため,そのぶん1つ1つが重い問題です。このような問題を処理しきるためにも,知識を様々に使いこなす訓練が不可欠です。

例えば,第2問で用いたトレミーの定理や極座標など,様々なツールを使いこなせるように,日ごろから別解を検討してみることも有効だと思います。

さらに第5問は,読解・解釈の要素が多分に含まれる問題であり,思考力が要求されます。

東工大を目指す皆さんは、ぜひ多角的な観点から様々な問題を検討して「考える力」を養っていってください。

当塾でも,典型的な問題は扱っていますが,なぜその解法を採用するのか,また他の解法は無いかなど,1つの問題を様々に検討していただきます。

体験授業も実施しておりますので,ぜひお気軽にお問い合わせください。

それでは今回はこの辺で!

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