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2023東京大学・理系数学 最新入試問題レビュー 公式やテクニックで頭が凝り固まっていませんか?

Posted by 伊藤 大幸 on
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こんにちは。
Dear Hope 副塾長の伊藤です。

今日は、最新入試問題レビューとして、先日実施された国立大の入試から、東大の理系数学について所感など記していきたいと思います。

まず、解いてみた感想としては、「とてもオーソドックス」だと思いました。基本がしっかり理解できていれば、どの問題にも対応できたと思います。

一方で、提示された条件や式の意味を解釈できないと、行き詰まっただろうなと感じる問題もありました。そのあたりについても具体的に見ていきたいと思います。

まず、今年のセットは次の通りです。

 (第1問) 
定積分を不等式により評価し、区分求積法により極限値を求める問題。

容易に積分計算を行えない関数を、積分区間に注目して不等式で評価する問題は、どの参考書にも含まれている典型問題です。本問の(1)もその例に漏れず、被積分関数の分母を積分範囲に注目して定数化して(したがって積分計算を行えるように関数を「無力化」して)評価するという、非常にオードソックスな問題でした。(2)は(1)の結果をもとに区分求積法に持ち込んで処理するという、これまたオーソドックスな一問。

 (第2問) 
3色の玉を一列に並べるとき、特定の1色および2色の玉が隣り合わない確率を求める問題。

配置に指定のない玉を先に並べ、残りをその間と両端のいずれかに配置していくという標準的な手法で解決できる問題でした。

 (第3問) 
放物線の内部に与えられた円の接線が、その放物線により切り取られる長さに関する問題。詳細は後述します。

 (第4問) 
空間内の球が、与えられた三角形と共有点をもつ条件を考察する空間ベクトルの問題。

きちんと問題の状況設定をつかめれば、平易な問題でした。これも後述します。

 (第5問) 
整式の7乗を特定の整式で割ったときの余りに関する問題。

剰余に関する典型的な処理が組み合わさった問題でした。

 (第6問) 
上面が解放された立方体の中心に一端が固定され、長さが一定の値以下の線分および折れ線の端点が動き得る範囲を検討し、その範囲の体積を求める問題。これも後述します。

独断と偏見による難易度としては、

 (易)4<2<1<5<3<6(難) 

だと思います。解答作成の手間を考えると、6が少し大変で、それ以外はあまり大差がないレベルだったと思います。また、多くの問題の(1)は平易な問題で、得点しやすい問題構成になっていました。

以下、いくつかの問題を引用しつつ、コメントしたいと思います。これらの問題はいずれも、「問題の意味をきちんと把握できたか」が分水嶺でした

まずは第3問。

(出典:2023年度 東京大学入試問題 数学(理系)第3問)

(1)は基本問題です。落とせません。(2)は、円の接点のx座標をtなどとおいて接線を表し、次いでその接線が放物線によって切り取られる部分(線分)の長さをtの関数として表します(この部分に技術が必要でした)。その関数が「同じ値を2回とり得る条件」を求めることが主題です。その条件とはつまり、「関数が極値をもつ条件」のことだと気づけたかが、勝敗の分かれ道だったと思います。

言われてしまえば「それはそうだ」と当たり前に思うことでも、それが提示されていない状態で自らそうだと判断するためには、やはり力が必要です。

次に第4問です。本問は、センター試験や共通テストのような設定の問題でした。以下に、問題を引用します。

(出典:2023年度 東京大学入試問題 数学(理系)第4問)

まず(1)と(2)は普通の問題です。絶対に落とせません。

(3)は、式の意味を考えることが大切です。三角形OHBと点Qの位置関係を把握できれば、容易に解けます。しかし、式をいじくりまわしてどうにかしようとすると、うまく処理しきれないかもしれません。

ポイントは、(1)が、ベクトルOPは△OABの(したがって△OHBの)法線ベクトルであることを示唆している、ということに気づくことです。だから、(3)で定義された点Qは、線分OAを3:1に内分する点から、△OHBを含む平面に垂直方向にOPと同じだけ「浮いた」位置にあることになります。このことが分かれば、あとは簡単なスケッチを作れば平易な計算で解にたどり着くことができるでしょう。

なお、本問によく似た設定の問題が、平成30年度のセンター試験(数学ⅡB・第4問)の追試で出題されています。類題演習として、ぜひ取り組まれると良いと思います。

次に、第6問です。ここでは、前半部分のみ引用します。

(出典:2023年度 東京大学入試問題 数学(理系)第6問(一部))

本問は、要するに次のような内容です。

「原点を中心とし、各辺がx、y、zの各軸に平行で一辺の長さが2の立方体を用意する。この立方体に天井は無く、残りの5面が壁(と床)で取り囲まれている。次に、一端が原点に固定され、長さが√3以下の線分OPを考える。この線分は自由に動けるが、立方体の壁や床を突き抜けることはできない。このとき、点Pが動き得る範囲の体積を求めよ。」

実は本問は、中学生でも解ける問題です。√3という根号が無ければ、中学1年生でも解けます。

√3という値は、与えられた立方体のひとつの頂点から原点までの距離に等しいことを踏まえると、点Pの可動範囲は、(図1)の着色部(ここの体積が求められるかがポイント)と、立方体の内部の残り全部です。着色部を正面から見ると、(図2)のようになります。

さて、着色部の体積ですが、対称性から、半径√3の球の体積の6分の1になります。なぜなら、今回の立方体は天井の一面が欠落していましたが、そうではなく、右側面の一面のみが欠落していても、点Pの可動範囲は全く同じです。左側面の一面のみが欠落していても、正面の一面のみが欠落していても、同じです。

そのようにして、立方体の6つの面について、欠落している面を順に一つずつ変えていって水色の立体を順次考えていくと、球全体が塗りつぶされることが分かります。したがって、一つの面に対応する水色の領域の体積は、球の6分の1になるわけです。

この(1)に関しては、微分や積分といった高度な数学は必要ありません。「公式やテクニックで頭が凝り固まっていませんか?きちんと問題の意味を理解して、その場で考えることができますか?」という出題者のメッセージが聞こえてくるようです。

これに続く(2)も類似の求積問題ですが、こちらはさすがに中学レベルとはいかず、積分法を利用して解くことになります。ただし、どのような立体の体積を求めるべきかは明示されておらず、与えられた条件から立体を特定していくプロセスが必要でした。東大らしいですね。

以上のように、今年の東大のセットは、オーソドックスな問題でしたが、与えられた条件の意味を正しく解釈しないと迷子になってしまうという一面もありました。東大の理系数学というと、試験時間中にたくさん計算をしなければいけないようなイメージがあるかもしれませんが、今年は、時間の半分を問題の解釈や論証に費やすようなセットだったのではないでしょうか。東大をはじめとする難関大を志望する皆さんは、テクニックを追い求めるだけではなく、その場で考える力を養うべく、本質的な理解を大切にしていって欲しいと思います

それでは今回はこのへんで。

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