難関私大 医学部の数学 テクニックの大切さ
こんにちは。
学習塾DearHope 数学・物理担当の伊藤です。
今回は,私大医学部の数学について感じていることなどお話ししたいと思います。
医学部,特に私大の医学部の数学は,一般に,制限時間に対して出題される分量が他の学部と比較して多いです。おおむね,他学部の1.5~2倍くらいのスピードで処理していかないと間に合いません。
さらに途中式は不要で,とにかく答えさえ出せばよいケースも少なくありません。
このようなスタイルはおそらく,将来医師として仕事をしていく上で,時間当たりの処理能力や取捨選択の力を評価したいという大学側の意図があるからだろうと推察しています。
さて, そのような医学部の問題で高得点を取得するためにはどうすればよいか。それは,基本的なテーマをきちんと理解することに加え,様々なテクニックを習得することが必要 だと思います。
例えば,次の問題を考えてみましょう。
この問題は,大問4に含まれる3つの問題のうちの1つとして(つまり小問として)出題されました。したがって,この問題に使える時間は,5分から,せいぜい10分です。しかし,本来なら大問として出題されてもおかしくはない問題です。
この問題の一般的な解答は次のような流れになると思います。
出回っている解答例も以上の手続きを踏襲しているだろうと思います。
しかし,このような解き方では,(ステップ1)を終えた時点で10分くらいかかりそうです。5分そこそこで本問に解答することはまず無理でしょう。
ではどうすればよいか,です。
次のように処理を進めると良いでしょう。
実際に見ていきましょう。
(ステップ1)
与式は,
と表すことができます。
この式は,θを-θに置き換えても不変ですから,題意の図形はx軸に関して対称です。
したがって,0≦θ≦πの範囲を考えれば十分です。
このチェックも大切なテクニックです。
さて,0≦θ≦πの範囲でいくつかrの値を確認すると次の通りです。
この表をもとに,対称性に注意してDを図示すると,次のようになります。
(ステップ2)
次に,微小面積(下図)を考えましょう。
Δθが十分小さいとき,微小面積素OABはおうぎ形に近似でき,その面積ΔSは次式で与えられます。
(ステップ3)
図形OAB(微小面積素)をx軸まわりに回転させてできる立体(うすい円すい状の殻)の微小体積ΔVを求めましょう。その際,パップス・ギュルダンの定理を利用するとスムーズです。
パップス・ギュルダンの定理とは,おおざっぱに言うと,
体積=(断面積)×(重心の移動距離)
という定理です。
なお,この定理を適用するには,重心の移動方向が断面積(微小面積素OAB)に対して垂直でなければなりません。本問では,x軸まわりの回転ですからこれを満たします。
さて,微小面積素OABは,「厚みがほぼ0の三角形」とも捉えることができますので,重心の位置は線分OAを2:1に内分する位置Gにあると考えて差し支えありません。
となります。簡単に求まりましたね。
改めて,簡潔に解答を示します。
このように,極座標に持ち込んだり,対称性に注目したり,パップス・ギュルダンの定理を使ったり,あの手この手を駆使してとにかく短時間で答えを出さなくてはなりません。
与えられた問題に対して解答の方針が立ったとしても,それが時間のかかる解き方であり試験時間中に解ききれなかったならば,残念ながら,それは解けないに等しいのです!答えだけが求められる私大医学部の試験においては,これが顕著です。
したがって, 私大医学部に合格するためには,「解き方が分かる」だけでは足りません。どうやったら「さっさと」解けるのかを追求していくことが不可欠 です。
本質的な理解はもちろん大切です。その上で,特に医学部を志望される生徒さんに対しては,授業で様々なテクニックをお伝えしています。
もし数学の成績が伸び悩んでいる方がいらっしゃいましたら,どうぞお気軽にご相談ください。
それでは今回はこの辺で!
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